大切な書類や本、履歴書に油が付着してしまうと、焦って水拭きしてかえって状態を悪化させることもあります。
しかし、紙の性質や染みの広がり具合に応じて、適切な処置をすれば自宅でも油染みを目立たなくすることが可能です。
この記事では、「紙についた油を取る方法」として、素材別や汚れの状態に応じた6つの具体的な対処法をご紹介します。
紙についた油を取る前に知っておきたい注意点

紙についた油染みを除去する前に、紙の材質や印刷状態、薬剤のリスクを把握することが大切です。
紙の材質による影響
紙の種類によっては、処理方法を誤ると破れたり変色したりすることがあります。
一般的なコピー用紙と和紙、コート紙では吸収性が異なり、薬剤の浸透度も違います。
紙の表面加工の有無や厚みによって、適切なクリーニング法を選ぶ必要があります。
特に高級紙や画用紙では、繊維構造が繊細なため、アルコール系薬剤の使用には細心の注意が求められます。
インクがにじむリスク
油染みを取る際にアルコールや溶剤を使用すると、印刷された文字やイラストがにじむことがあります。
特にインクジェットプリンターで印刷された紙は水分や薬品に弱く、除去作業に慎重さが必要です。
消毒用エタノールや除光液は速乾性がある反面、インクを溶かす性質もあるため、使用前に目立たない部分でテストすることをおすすめします。
薬剤の取り扱いに関する安全対策
無水エタノールやベンジンなどの薬剤は、揮発性や引火性が高いため、必ず換気の良い場所で作業しましょう。
また、直接手で触れることのないよう、ゴム手袋や保護メガネの着用を心がけてください。
薬剤が肌に付着すると炎症を起こす恐れがあるため、使用後は石けんで手を洗いましょう。
家庭内で安全に作業を行うためには、準備と環境整備が重要です。
紙についた油を落とす6つの方法【効果別】
紙についた油汚れには、状態や材質に応じて適した方法があります。
ここでは、効果別に6つの手軽な対処法をご紹介します。
ウエットティッシュで対処する
油がついて間もない場合は、アルコール除菌タイプのウエットティッシュが効果的です。
特にビニール加工された紙表面に適しており、軽度な染みに対しては十分対応できます。
除菌タイプは揮発性が高く、紙への水分浸透を最小限に抑えながら油分を分解します。
紙を強くこすらず、軽く叩くようにして使用することがコツです。
除光液を使った落とし方
除光液には油を溶かすアセトンが含まれており、紙についた油染みにも有効です。
表面の油分を浮かせる作用があるため、染み込みが浅い場合に効果を発揮します。
ただし、印刷された文字やイラスト部分には注意が必要で、インクがにじむリスクがあります。
紙の裏にティッシュを敷き、除光液を含ませたコットンで優しく叩くように処理しましょう。
無水エタノールの活用方法
無水エタノールは蒸発が早く、紙へのダメージが比較的少ないため、繊細な素材に向いています。
濃度99%以上の無水タイプを使うことで、水分によるインクのにじみを抑えつつ油分のみを除去できます。
キッチンペーパーやコットンに少量含ませ、軽く叩くようにして染みにあてるのがポイントです。
作業後はよく乾燥させましょう。
ベンジンを使ったシミ抜き方法
ベンジンはクリーニング業界でも使われる油溶性の薬剤で、頑固な油染みに高い効果を発揮します。
紙の裏面に吸水紙を敷き、ベンジンをスポイトで少量ずつ垂らしながら、汚れをコットンで吸い取ります。
色紙や和紙など、着色や素材がデリケートな紙には使用を控えましょう。
強力な分、作業中の換気と火気の管理が必須です。
中性洗剤を使用する方法
家庭にある食器用中性洗剤を使えば、安全かつ低刺激で紙の油染みに対応可能です。
中性洗剤は弱アルカリ性の性質があり、酸化した油にも一定の効果を示します。
洗剤と水を5:1で希釈し、ティッシュやコットンに染み込ませて叩くように拭き取ります。
作業後は水分を含ませたペーパーで洗剤を中和し、最後に乾燥させることでシミを最小限に抑えることができます。
台所用漂白剤を使う方法
台所用漂白剤は、油汚れが時間経過によって酸化し、変色してしまった場合の最終手段です。
漂白成分が油分を分解し、紙の色を回復させる効果があります。
白黒印刷された文庫本や教科書などには有効ですが、カラー印刷や特殊紙には使用を避けてください。
使用時には必ず保護具を着用し、反応を見ながら慎重に作業を進める必要があります。
紙に油染みをつけないための予防策

紙に油が付くのを防ぐには、日常的な扱い方を見直すことが基本です。
習慣を少し変えるだけで予防につながります。
食べ物や飲み物は遠ざける
書類や本を扱う場所では、油分を含む飲食物を近づけないことが予防の第一歩です。
特にパソコン作業や読書をしながら食事をする場面では、無意識のうちに紙に触れてしまいがちです。
カレーやスナック菓子の油分は目に見えなくても紙に染み込みやすく、除去が困難になります。
作業スペースと飲食スペースを明確に分けることで、こうした事故を未然に防げます。
大切な書類の扱い方を見直そう
契約書や履歴書など、代えの利かない重要書類は特に丁寧な管理が求められます。
クリアファイルやドキュメントケースに入れて保管し、使用時以外はなるべく触れないようにしましょう。
食事中に取り扱うことを避け、机上でも下敷きやマットを使うと汚れ防止に役立ちます。
扱いに気を配ることで、そもそも油染みがつくリスクを大きく下げることができます。
油が取れない場合の対処法
紙に付着した油がどうしても落ちない場合は、無理に処置せず他の方法で対応することも選択肢です。
専門クリーニング店に依頼
どうしても自力で油染みを除去できない場合は、書籍修復や文書保存を専門とするクリーニング店に依頼しましょう。
特に古文書や大切な家族の記録などは、知識と経験を持つプロに任せることで安全に処置されます。
費用や期間はかかるものの、高精度の修復が可能です。
保存処理や防酸加工など、長期保管に適したケアも受けられます。
コピーや再印刷で代替する方法も
もし原本にこだわらず内容が保持されればよいという場合、コピーや再印刷での代替も現実的な方法です。
特に学校の提出物や職場の配布資料などは、清潔な状態で再出力することが推奨されます。
スキャナーを使ってデータ化しておけば、再発行が容易になるため、大切な書類は日常的にバックアップを取っておくことも重要です。
よくある質問(FAQ)
紙に油染みがついたときに多く寄せられる質問について、具体的に回答します。
油染みは時間が経つと取れない?
油染みは時間が経つことで酸化し、紙繊維に深く染み込むため除去が難しくなります。
染みが付着してすぐなら、ウエットティッシュやエタノールで対応可能ですが、時間が経過すると漂白剤などの強い処置が必要になります。
それでも完全には消えない場合もあるため、早期対応が最も効果的です。
ボールペンやインクのにじみを防ぐには?
油染みを落とす際に使う薬剤はインクを溶かす成分を含むことがあります。
ボールペンや万年筆の文字がある場合は、薬剤が文字に触れないようにピンポイントで処理を行ってください。
また、除光液やエタノールは印刷インクとの相性によりにじみを起こすため、事前に見えない箇所で試すことが大切です。
画用紙や和紙の場合の対処法は?
画用紙や和紙は繊維が粗く、薬剤が浸透しやすいため、除光液やベンジンの使用は避けたほうが無難です。
中性洗剤を水で薄めたものや、無水エタノールを最小限に用いて優しく処置する方法が推奨されます。
特に和紙は表面が柔らかいため、強く押さえたりこすったりしないよう注意しましょう。
どの方法が一番安全?
安全性を優先する場合は、まずウエットティッシュや中性洗剤のような低刺激な方法から試しましょう。
薬剤の取り扱いが不安な場合は、無水エタノールなど揮発性が高く紙への残留が少ないものが適しています。
作業環境や紙の種類に応じて方法を選ぶことが、最も安全かつ効果的な対処法になります。
まとめ
紙に付いた油染みは、状態や素材に応じた正しい方法で対処すれば、家庭でもある程度きれいに除去することが可能です。
ただし、焦って処理をすると紙を破損したりインクをにじませたりする恐れがあるため、落ち着いて丁寧に対応することが大切です。
油が取れない場合は専門業者に相談したり、再印刷やコピーなどの代替手段を活用しましょう。
予防策を講じることで、そもそもトラブルを回避することができます。