電気設備や契約において「kVA(キロボルトアンペア)」という単位は、一般家庭や事業所の電力容量を示す際によく用いられます。
kVAは「見かけの電力(皮相電力)」を示すもので、実際に消費される電力であるkW(キロワット)とは異なります。
例えば、10kVAとは理論上、最大10,000ボルトアンペアの電力を供給できることを意味します。
この値は、電圧(V)と電流(A)の積によって決まり、使用する電源の種類(単相・三相)や電圧によって、何アンペアに相当するかが変わります。
また、電力には「単相」と「三相」という2種類の方式があります。
一般家庭では主に単相100Vまたは200Vが使用されており、工場や業務用施設では三相200Vが使われることが一般的です。
同じ10kVAでも、単相か三相かによって取り出せる電流が異なるため、用途に応じた正確な理解が必要です。
本記事では、10kVAが200Vで使用された場合に何アンペアになるのかを計算し、その容量で使用できる機器の目安や契約時の注意点などを解説していきます。
10kVAは何アンペア?200V使用時の計算式と答え

電力容量をアンペアに換算するためには、以下の計算式を使用します。
電流(A)=(電力(kVA) × 1000) ÷ 電圧(V)
単相200Vで10kVAを使用する場合、計算式は以下のようになります。
10 × 1000 ÷ 200 = 50A
つまり、単相200Vにおける10kVAは50アンペアに相当します。
一方、三相200Vで使用する場合は、次のような計算式を用います。
電流(A)=(電力(kVA) × 1000) ÷ (√3 × 電圧(V))
√3は約1.732ですので、具体的に計算すると、
10 × 1000 ÷(1.732 × 200) ≒ 28.9A
三相200Vにおける10kVAは約29アンペアとなります。
これらは理論上の値であり、実際には力率や安全マージンを考慮して設計・契約する必要があります。
電気設備を設計する際には、電力会社や専門技術者と相談することが大切です。
契約容量10kVAでどれくらい使える?家電使用の目安
契約容量10kVAが実際にどの程度の電化製品を同時に使用できるのかは、契約前に知っておきたい重要なポイントです。
単相200Vで10kVAは50Aに相当します。
この範囲で使用可能な家電製品の目安は以下のとおりです。
家電製品 | 消費電力(kW) | 電流(A)目安 |
---|---|---|
エアコン(中型) | 1.5 | 約7.5 |
電子レンジ | 1.3 | 約6.5 |
IHクッキングヒーター | 3.0 | 約15.0 |
洗濯乾燥機 | 1.2 | 約6.0 |
テレビ(大型) | 0.2 | 約1.0 |
上記の家電を同時に使用した場合でも、合計で約36A程度となり、10kVA(50A)であれば十分に余裕があります。
ただし、実際には機器の起動時に通常よりも大きな電流(突入電流)が流れるため、ブレーカー容量にはある程度の余裕が必要です。
また、契約容量とブレーカーの定格は一致しない場合も多く、安全性を確保するために慎重な設計が求められます。
10kVA契約時の注意点とよくある誤解

10kVAという容量について、「10kWまで使える」と誤解するケースが少なくありません。
しかし、kVAはあくまで皮相電力であり、実際に使える有効電力(kW)は、電力の力率に左右されます。
一般的に、家庭や商業施設では力率は85~95%程度であるため、10kVAの契約で実際に使える電力は8.5~9.5kW程度となります。
また、契約容量を超える電力を使用した場合には、主幹ブレーカーが遮断される可能性があります。
特に、スマートメーターを使用している場合は、契約容量を超えると自動的に電力供給が停止するケースもあります。
さらに、契約可能な容量の設定や選択肢は、地域や契約している電力会社によって異なります。
例えば、10kVAが選べない料金プランが存在する場合もあるため、事前に確認することが重要です。
契約容量を選ぶときのポイント
契約容量を適切に選ぶためには、自宅や施設で同時に使用する機器の合計電力を見積もる必要があります。
家庭であれば、エアコン、IH調理器、電子レンジ、洗濯機、テレビなど、生活に必要な機器を同時に使う状況を想定し、その合計値に突入電流などの余裕を加えて検討します。
小規模な店舗や事務所であれば、空調機器、照明、厨房機器、パソコン、プリンターなど、業務に必要な設備を考慮します。
契約容量が必要以上に大きいと、毎月の基本料金が高くなります。
逆に、容量が不足しているとブレーカーが頻繁に落ちるなどの支障が出る可能性があります。
こうしたリスクを避けるためにも、必要に応じて電力会社や電気工事業者に相談することが推奨されます。
まとめ
10kVAの契約容量は、単相200Vでは50アンペア、三相200Vでは約29アンペアに相当します。
この容量は一般家庭や小規模事業所において、複数の電化製品を同時に使用するのに十分な余裕があります。
ただし、kVAとkWの違いや力率の影響を正しく理解することが大切です。
契約容量を超える使用はブレーカーの遮断や電力供給の停止につながるため、安全で効率的な電力利用のためにも、事前の計画と見積もりが欠かせません。
不安がある場合は、電力会社や電気工事の専門家に相談し、用途や使用環境に合った適正な契約を選ぶことが、安心で安定した電気利用への第一歩となります。